8/20 ④「エコガーデン 実施計画II」長濱先生

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「何故この植栽でこの庭をつくるのか」

8月20日 ガーデンデザイナー 長濱香代子先生

8月20日の授業は、前回に続きガーデンデザイナーの長濱香代子先生による「エコガーデン実施計画 後編」が行われた。

 長濱先生は今回、ガーデニングにおける植栽の選択根拠について説明。

「何千種類もある植栽の中で、何故それを選ぶのか」を常に考えていると話す。

 つまり自分のイメージした庭づくりを行うためには、植栽をよく知る必要がある。今回は長濱先生が日々どのような観点で植栽を見ているのかを語ってくれた。

 

 例えば林や森を見るときも、漠然と眺めるだけでなく、1本1本の木の幹、枝、葉のつき方や色、角度、大きさは同じ樹木でも全く違う。しかもそれらがいくつも重なり組み合わさると、その関係性やコントラストは全く違ってくる。

 このように自然の中の木々のあり方を見る視点は、庭づくりのヒントになる。

「こうした視点から植栽を見る目を鍛えることができれば、庭完成数年後の木々の育ちをイメージし、それぞれに何と何を合わせれば最適かを考えていける。それが植栽プランニングに繋がっていく」と話す。

 

 こうした観点を元に、自分が欲しい植栽をどのように入手すればいいのか。

 主なケースは、造園会社や植木屋、商社、ナーサリーなどからの入手だ。

 まず自分が理想とする樹木を入手するのに必要なのは、販売先(生産者)である樹木のプロとの円滑なコミュニケーションであるという。

 まずは、どのような樹木が欲しいのか、プロとのコミュニケーションの中で相手に伝え、相手が持つ情報をうまく引き出し、その中から理想的な樹木があるかどうかを探っていかなければならない。

 そこでまずは、欲しい樹木の形や樹種、大きさをイメージし、絞り込み、その樹種が得られない場合を想定して、類似の樹種も幾つか揚げておくことも必要だ。

 長濱先生は樹木の高さを取っ掛かりにして交渉に入り、庭の平面図なども用いてわかりやすく自分のイメージを伝えながら、同時に庭の周辺環境を汲んだ上で、選択しようとしている樹木の条件が適しているかも含めて話し合っていく。

 また樹木がどの角度から見られて美しいからを考えることも大切だ。玄関からの角度を最適のものとするのか、リビングからかなどだ。

 後は樹木の性質や育て方、管理方法までも頭に入れて生産者との交渉に臨むと、会話のきっかけの一つにもなり、円滑なコミュニケーションを膨らませる機会にもなる。

 というのも樹木生産者の多くは樹木愛好家である。よって販売者でありながらも手塩にかけて樹木を育てるため、よっぽどの相手でなければ売ってくれない、という姿勢の人が多いというのだ。

 同時にそれだけ大切に樹木を育てるため、そこでしか得られないような素晴らしい一点ものも多く、なおさら敷居は高くなる。

 そこで長濱先生は生産者とのコミュニケーションを深め、言わば「この人ならば売っても大切に育ててくれるだろう」と認められるための様々な方法を試行錯誤し、様々な切り口を育ててきた。

 そこにはまた樹木の品種や学名さえをも頭に叩き込んで行くことも、その一つであると話す。

 

 しかしこうしたコミュニケーションを駆使してもなお、「自分のイメージした樹木を得手に入れるのは苦労する」という。

 自分のイメージに似通っていても、微妙な葉の付き方や枝の広がり方、高さなど、ぴったりくるものは少ない。

 実際長濱先生も、駆け出しのころは飛び込みで生産者を訪ね歩いたが、モミジひとつでも何千種と存在し、何も知らない駆け出しが何を選ぶこともできない。何かを質問することさえ困難だ。

 しかし先述した様々な切り口をもとに生産者から少しずつ情報を聞き出し、キーワードを元に自分で知識を掘り下げ身に付けていくことで、少しずつ自分が欲しい樹木を探せるようになっていったという。

 実際に樹木を探す場面でのポイントは、「落葉する種類の樹木は落葉している状態の方が選びやすい」ということ。

 落葉しているため簡単に掘り出せるため、良好なものが得られやすいというのだ。

 一方で、葉が付いた状態をイメージしにくくもあり、それをイメージできなければ配置にも影響するため要注意だ。

 形状以外では、その庭の環境に適した樹木を選択する、ということも大切だ。見た目はよくても、環境に適さなければ結局うまくいかないことは多い。

 また多く日照時間を与えられる配置も大切だ。土地の周辺環境、マンションや塀、生垣などとの関係性をしっかり把握した上で臨まなければならない。

 さらに庭の土の乾湿、水はけ、地域によっては耐寒の確認も怠ってはならない。

 長濱先生は実際に作庭するにあたり、将来の生育度合いを5~10年スパンで見てつくるという。

 完成当初は多少庭が寂しく感じられても、二冬を越えると見た目は倍以上のボリュームとなる。

 あまりに植栽同士の間が近すぎると、2~3年後に全体のバランスが壊れ、作庭当初に設定した柔らかな演出も壊れてしまうという。

 つまり成長しながらの変化を頭の中でイメージできる必要がある。 

 そのためには植栽の年間の変化サイクルを熟知し、全体のデザインや色を考える。

木は葉の集まりであり、緑の色も様々。それをどう認識するかで、成長後の奥行き間を知り、狭い場所でも効果的な配置によりうまく式の変化を演出できる。樹木の色の変化は、四季の変化だけではなく、四季の個々、例えば芽吹く前、芽吹く直前、芽が吹いた後、そして新緑など、細かく随時にわたり変化しているのだ。

 さらに同じ樹木の葉でも、春は濃い緑色から黄色まで様々な色が見える。細かく分類するのは難しいが、その際には「春のきみどり色」や「新芽の色に近い色」など、自分なりの言葉と感覚で色の名を持つことが大切だと長濱先生は話す。

 大切なことは、その木の一時期だけを見るのではなく、年間の様態の変化をしっかり見て、そのことを考えるということだ。すると、花が開花したら全体はどうなるか、花が落ちるものは落ちるとどうなるのか、実や種はどのようにつくのか、などと考えていける。

 1年の変化を他の樹木と組み合わせて考えていけるようになると、植栽デザインの幅がぐんと広がり自由度が増すわけだ。

 すると植物にしかないインパクトを見る人に与えることにも成功する。

そのためには、その木しかありえないという木をいかに選び、仕立て、どこにもない景色をつくることができるかどうかに依っているという。

 基本的に長濱先生は、「樹木を使い、柔らかい景色を見る人に楽しんで欲しい」と考えて植栽を行っている。

 言わば「ぼんやりできる庭がよい庭ではないか」と考え、そうした庭をどうすればつくれるかを日々考えているという。

 そのためには「他人に見せるためではなく、自分の好みに従って、自分自身のために庭を作っていく過程で、色々と気付き、幅が広がるのではないか」と考える。

 自分が気に入った植栽を植え、それが春にはどう育つのか、好きな木やその季節、実を食べる楽しみなど、一つひとつの好みにしっかり向き合うことが大切だと。

「園芸は芸というだけあってアートだと思う。よって自分の信じるものを持ち、失敗を恐がらずトライしてほしい。その中で100やって99失敗しても、残った1つが10年残ると10になる。1知ったことが10にも20にもなるのが園芸の知識経験になる。一つひとつコツコツとやる以外に近道は無い。体を使い、感性でつくることを大切にしてほしい」。

 長濱先生は「自分で育てると植栽の性質もわかり、本に載っていないこと以外の知識、半日陰でもここまで育つのかなど、現場の感覚が最後は頼りになる」と語る。

「上手でなくても、根気と情熱で何年も続け、植栽の変化の様を観察し、それをヒントにして自分のものを作って欲しい」と長濱先生は最後に話した。

猿渡一好

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