第2回目は、千葉県佐倉市で有機農業をされている林重考先生(林農園)から、地域宅配システムと年間作付け計画の立て方についてお話を伺いました。
林さんはもともと実家が農家をされていて、それを継ぐカタチで農業を始めたそうですが、3年目に農薬と化学肥料を使い続ける近代農業に疑問を感じ、埼玉県の小川町で有機農業を営んでいた金子さんの霜里農場で1年間研修を受け、その後実家に戻り、有機農業を始めたとのことでした。
・有機農業を始めた理由
転機となったエピソードで印象的だったのが、もともと林さんのご両親は、近代農業で大和芋、さつまいもなどを作っていたそうですが、「芋を作る時点で収量をあげるために多少の農薬や化学肥料を使用することはまだ理解できた。しかし、芋を収穫した後、出荷する前に、漂白剤や発色剤につけるなど、色見をよくするための加工をする。少しでもいい価格で買ってもらうために、毒を使ってしまう。これには納得がいかなかった。自分が一生かけてやるような仕事だとは思えなかった。」というお話がありました。
なぜそんなことが行われるかというと、中央卸し市場に買い取ってもらう際の基準が、「見てくれ重視」「カタチ重視」になっているためで、少しでもカタチや色が悪いと減点対象となる。その結果、毒(薬剤)を塗ってでも、いい値段で買ってもらうための"加工"が行われてしまうのだそうです。
・有機農業の宅配システム
有機農産物の流通形態には何種類かあって、主なものをあげると:
生産者 / 消費者
1)個人 ー 個人
2)個人 ー グループ
3)個人 ー 有機流通者 (ex.大地を守る会、らでぃっしゅぼーや)
4)生産者グループ ー 消費者グループ
5)生産者グループ ー 生協やスーパー (ex.デコポン)
その他個人農家が販売所をつくって直接販売するスタイル(いわゆる産直)などもある。
#生産者は、小量多品目栽培スタイルでいくか、品目を限定して大量に生産するスタイルにするかによって、どのように消費者とつながっていくかを考えていく必要がある。
たとえば、1)や2)のケースでは小量多品目栽培スタイルとなる。個人の消費者は、同じ野菜ばかり大量に送られてきても困るわけで、ある程度品目を確保しないと消費者から契約を取るのは難しいだろう。もし、個人で数十品目作るのが大変だと言う場合には、3)4)5)のようなスタイルが考えられる。有機流通者は、生産者を何人も抱え、品目数を確保しているし、生産者グループに入ることができれば、農家間である程度分担ができるので、個人で作る品目数を押さえることが可能。
#なぜ通常のルートである卸し市場を通さないのか?という質問に対しては、すでに述べたことと重複するが、市場はカタチ重視であるため、いくら安全でおいしい野菜を作っても、カタチが悪ければ価格が安くなってしまうため。では、なぜカタチ重視になるかというと、市場は広域輸送をすることが前提となっているためで、輸送のために箱詰めをする。したがって、その箱に入りにくいものを除外するための仕組みとなっている。すなわち、いかに効率よく配送するかを追求した結果が「カタチ重視」で、そのツケとして、有機農業で安全で美味しい野菜をつくっても、評価されない、ということが起きている。そのため、上記で挙げたような流通形態が考え出された。
・林さんの農園について
林農園では、1.8ヘクタールの畑で、80品目の野菜やフルーツ、豆や麦などの穀物を作っており、旬の野菜を、約80軒の消費者に、一軒ずつ自分で配達して、玄関まで届けている。上の分類で言うと1)の形態。
・身土不二
どうして自分で直接届けるかというと、儒教の言葉に「身土不二」という言葉があって、これは「人間の体は、その人が住んでいる風土と切り離せない、そこで採れたものをそこで住んでいる人が食べるのが体にいい」という意味だそうです。日本語で言えば、最近よく耳にするようになった「地産地消」という考え方ですね。だから、できるだけ自分で配送できる範囲にしているとのこと。ただし、若干例外もあって、どうしてもというお客さんには宅配業者を利用しているとのこと。
・「ありがとう」ではなくて「お願いします」
丹誠こめてつくった野菜をお客さんに届けるときは、普通であれば野菜を買ってくれて「ありがとうございます」というのかもしれないが、うまく調理してくださいという意味をこめて、思わず「お願いします」と言ってしまうそうです。それに対して、消費者の方が「ありがとうございます」と応えてくれるそうです。月に一度はニュースレターを野菜と一緒にいれて、いまの畑の状態を伝えたり、旬の野菜の調理方法、日頃考えていることなどを書いているとのこと。また、春と秋には農園に消費者の方を招いて、交流会をされるとのこと。たんなる物の売り買いではなく、顔の見える関係づくりを楽しまれているとのことでした。交流会では、野菜料理のレシピから環境問題まで、さまざまな話題で盛り上がるそうです。
毎年秋頃、緑の家学校でも林先生の農園を訪れるツアーを行っています。ぜひ見学しにいきたいと思いました。
次回の授業も林先生で、「在来種の種取と種の保管」の話を伺います。
(※年間作付け計画については、別途資料配布されているので、割愛します)